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「杉」 駆除しかない 山釣り紀行TOP




「ざっこシンポ 秋田の淡水魚を語ろう」(主催:秋田淡水魚研究会)
 平成14年3月17日(日)、「ざっこシンポ」が秋田市の県生涯学習センターで開催された。秋田淡水魚研究会(代表杉山秀樹、会員数約50名)の主催で、在来の淡水魚保護に関心のある県民ら約200名が参加。特に、在来淡水魚の脅威となっているブラックバスやブルーギルの密放流の防止や駆除など具体的な対策と行動が急務との意見が相次いだ。
 主催者側は、当初天気が悪く、100人も来るかなぁと心配していたが、定刻になると、会場内に準備した約200席の椅子全てが埋まった。秋田の淡水魚と外来魚問題に対する関心の高さが伺えた。総合司会は、秋田淡水魚研究会の泉祐一さん。
 まず秋田淡水魚研究会代表の杉山秀樹さんが、スライドを中心に秋田の代表的な淡水魚の現状と将来について講演。右のスライドは、幻の魚・クニマス。昭和15年、開拓と電源開発を目的に玉川の水を田沢湖へ導水、毒水を希釈する方法が実施されたが、世界で田沢湖にのみ生息していた希少種・クニマスは絶滅してしまった。杉山代表は、「現在、希少淡水魚は危機的状況にあるが、田沢湖のクニマスと同じ過ちを二度と起こしてはならない」と強い口調で訴えた。
絶滅のおそれがある秋田の淡水魚
 杉山代表によると、秋田の淡水魚は約130種。このうち、県内で絶滅が危惧される主な淡水魚を参考に掲載する。(資料:秋田版レッドリスト、秋田県、1999年。写真:当日配布された「雄物川と魚たちの生活」国土交通省東北地方整備局湯沢工事事務所、監修:杉山秀樹より)

大河川:ハナカジカ、絶滅危惧種1B類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの) 大河川:アカザ、絶滅危惧種1B類
天然湖沼:クニマス、絶滅種(すでに絶滅したと考えられる種) 農業用ため池:アカヒレタビラ、準絶滅危惧種(現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧種」に移行する可能性のある種)
農業用ため池:ゼニタナゴ、絶滅危惧種1A類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種) 農業用ため池:シナイモツゴ、絶滅危惧種1B類
ため池に連なる水路:メダカ、留意種(本県で絶滅の恐れはないが、国際的、国内的に保護を要すると評価されている種又は亜種。環境庁では、絶滅危惧種2類) ため池に連なる水路:ホトケドジョウ、絶滅危惧種1A類
湧泉(仙北、平鹿など):イバラトミヨ雄物型、絶滅危惧種1A類 湧泉(仙北、平鹿など):スナヤツメ、留意種(環境庁、絶滅危惧種2類)

 希少淡水魚の危機的状況は、生息環境の悪化とブラックバスに代表される外来魚問題である。生息環境の悪化を改善する動きは、既に「魚のすめる川づくり」や「伝統工法の導入」「水田生態系保全」「生活排水処理の整備」など、完全ではないものの前向きの取り組みが行われるようになった。

 残る外来魚問題はどうだろうか。県内69市町村のうち、48市町村、約7割でブラックバスの生息が確認されている。県内の農業用ため池は、約3千ヶ所もあるが、その1割以上で生息が確認されている。密放流を防ぐ有効な手段がない現状では、生息域のさらなる拡大が懸念されている。
 また、杉山代表は、県内で未確認だったブルーギルが昨年初めて見つかったという衝撃的なニュースを発表した。昨年8月から9月にかけて5匹のブルーギルが秋田市内の河川で釣れたという。いずれも、全長15センチほどで、放流されてから1年ほどたっているとみられる。ブルーギルは繁殖力が強く、魚の稚魚や卵を好んで食べるため、拡大すれば在来魚にとって危機的状況だと語った。
 昨年8月から今年2月まで、ため池11ヶ所、河川9ヵ所で外来魚駆除を実施、約7千匹のオオクチバスを捕獲。ため池では、1ヶ所で約2千匹とほぼ完全駆除に成功した場所もあるが、大半は完全に水を抜くことができず、悪戦苦闘が続いた。河川では、比較的流れが緩く水深も深いワンド(湾入部)で多く捕獲。雄物川では冬に結氷したワンドで氷を割りながら追い込み、大型を中心に59尾を捕獲した例もあると報告。

 捕獲されたオオクチバスの最大は、全長50cm、重さ2キロもあった。オオクチバスが増えすぎた農業用ため池では、ゼロ歳魚がほとんどみられない所もあった。オオクチバスの胃の内容物調査では、カエル類、ネズミ、小鳥、ルアー、共食いを示すオオクチバスまで出てきた。中には、全魚類捕獲数の80%以上がオオクチバスで占められていたり、小型の魚類がまったく出現しないなど、ブラックバスの深刻な影響が報告された。
 パネルディスカッションの司会は、田沢湖町在住の画家・三村治男さん。パネリストは、写真家の秋月岩魚さん、琵琶湖博物館の中井克樹さん、八郎湖内水面増殖漁協組合員の安田貞則さん、淡水魚研究会代表の杉山秀樹さんの4人。ゲストには、ネーチャージャーナリストの鹿熊勤さんを迎えて活発な議論が行われた。 
左:八郎湖でバス釣りを楽しむ釣り人たち 右:八郎湖で捕獲されたブラックバス

 漁師でもある安田さんは、次のように語った。八郎湖のバス漁獲量は、平成2年0.4トンから平成5年には8トンと20倍近くに増え、以降10〜20トンと莫大な量となっている(漁獲量が20トンということは、その3〜5倍の資源があると推察されている)。今では、バス同士による共食い現象も起き、かなり大きなバスも食べている。八郎湖のブラックバスは、ピークを過ぎて自己淘汰の時期に入ったのではないか。一方、バスの産卵場所が、平成12年はアオミドロの繁茂、平成13年はシャジクモの繁茂によって奪われ、新しい産卵場所を求めて馬場目川へ移動しているようだという。さらに、数が少ないため漁獲の対象となっていない30数種の魚たちは、やがて八郎湖から姿を消すのではないかと警告した。
 琵琶湖博物館の中井克樹さんは、琵琶湖の外来魚問題について解説。琵琶湖のブラックバスは、1990年頃がピークで、以降減少傾向を辿ったが、1995年以降は高値安定が続いている。一方、ブルーギルは猛烈な勢いで増えている。群れをなして沿岸域を 泳ぐブラックバスとブルーギルのスライドを見せながら「在来魚たちがこの群れに襲われ、運良く沿岸域で卵を産みつけたとしても、激増しているブルーギルに食べられてしまう。こんな状態で、在来魚たちにどうやって生き延びろと言えるのか」と、琵琶湖に生息する在来魚たちの追い詰められた現状を訴えた。さらに、南湖の定置網には、何と9割以上がオオクチバスとブルーギルが占めているという。

 「バスを完全に駆除することは不可能、無駄ではないか」という批判があるが、外来魚が増え過ぎている現状があるかぎり、その影響を少しでも軽減するために緊急避難的な措置として駆除は、当然のことであり、有効な手段の一つだ。もちろん、税金を使う事業なら、できるだけ効果的な方法を検討、開発する努力もしなければならない。「駆除できない」ではなく、有効に駆除できる方法をみんなで議論、検討することを期待したいと述べた。
 「ブラックバスがメダカを食う」の著者・秋月岩魚さんは、「密放流を防ぐ手だてがない現状では、バス釣りを禁止する以外に方法がない」と「バス釣り禁止、完全駆除」を訴えた。釣りは自然に学ぶ最高の遊びだ。何も全ての釣りを禁止すると言っているのではないので誤解のないように。目先の利益にとらわれて、自然を食い潰しているような釣り産業界に未来はないだろう。むしろ、持続的な釣りを振興するためにも「バス釣り禁止、完全駆除」を行うべきだと訴えた。
 鹿熊勤さんは、バスフィッシングを取り巻く産業構造について言及。1985年からバスプロトーナメントが始まり、派手な商業主義に乗って急成長、ルアー関連出荷額が約600億円と巨大化。今ではバスを養殖する業者、バスを販売する業者まで出現。1992年、水産庁がブラックバスやブルーギルの移植放流を制限する通達を出し、全国の自治体も相次いで移植放流の禁止条例を出したにもかかわらず、新種のコクチバスが凄まじい勢いで広がっている。こうした違法行為の上に成り立つバスフィッシング産業は、ビジネスとして完全に定着していると報告。
 参加者とパネリストとの質疑応答

Q:不妊化したオスを放流したら絶滅できるのではないか。それができるのかどうか。
A:確実な手法として確立されていない。規則でも、染色体を操作した魚は放流してはならないことになっている。
バスのオスとメスは、産卵前に儀式を伴った行動をする。不妊化したバスは、メスを呼び込めないのではないか。さらに不妊化したバスを大量に放流すれば、一時的にしろ在来魚に対して悪影響が出る。現状では困難。

Q:昨年、ある大型釣具店で、公認バス釣り場を求める署名をしてくれと、しつこく求められた。バス釣りの人たちはマナーが悪く、闇夜に紛れてバスを放流する者もいる。とても「共生」なんてできない。
(この署名運動は、平成13年3月15日現在で約110万人が署名、うち秋田県は1,938名で全国でも最低であった。・・・財団法人日本釣振興会の回答より)

Q:こうした外来魚問題を学校の環境教育の一環としてなぜやらないのか。小学校の頃から教えられるようにできないか。
A:今日のシンポの内容では、ちょっと難しすぎる。子供たちにも分かりやすいテキストを作る必要がある。
環境教育は、子供の頃からやらないと意味がない。大人は、自分の利益や立場だけで主張する。子供たちは、純粋で何が正しく何が悪いかを素直に判断できる。積極的に取り上げるべきだ。

青森県の現状・・・青森県でもブラックバスが異様な広がりをみせている。市街地では、バスしかいない池がかなりある。子供の時にバスしかいない池で遊ぶしかない。とすれば、自然とのふれあいは、バス釣りが原点などという可笑しな子供たちが増えるのではないか、と危惧している。また、在来の淡水魚では、モツゴ、タナゴ、ギンブナが危ない。ブラックバスが増えた池では、水鳥の繁殖ができず、鳥の世界にも大きな影響が出ている。

Q:昔から「ムシザッコ」で食べると、どんなザッコでも美味い。ブラックバスを美味しく食べるような方法はないか。
A:大潟村では「八郎マス」という名称で、ブラックバスの燻製を販売している。このバスは、全て私(安田貞則)が捕獲したものを製品化している。物珍しいのか、良く売れてますよ。組合では、バス調理のレシピを作ったりしているが、昔から食べた魚以外はなかなか食べてくれない。
ブラックバスには、独特の臭いがある。美味しく料理するには、まず熱湯をかけること。さらに、塩でもみ、バスの粘液をとれば、美味しく料理できる。
バスを美味しく食べることを強調すると、バス釣り業界に言い訳を作ることになりはしないか。ブラックバスの問題は、釣りを禁止するしか解決策はない。闘い続けるしかない、との強硬論も出た。

なぜ密放流をするのか・・・バスを釣る人たちは、新しい釣り場を作ろうと安易に池などにバスを放流する。数年は爆発的に増えて釣れるが、やがてバスも減少しスレてくると、なかなか釣れなくなる。次なる処女地にまた放流する、といった悪循環になっている。バスを釣りたいという欲望があるから、バスの密放流が止まらないのであって、こうした構図を考えると、バス釣りそのものを見直す以外にないだろう。

最後に杉山代表は、次のように締めくくった。
昭和57年11月、秋田市のからす沼で本県第1号のバスが見つかった。その時鑑定したのが私だったが、残念ながら外来魚に対する危機感を持ち合わせていなかった。もしその時、私にその危機感があったなら、こんな「ざっこシンポ」を開かずに済んだかもしれない、と自己反省している。皆さんも自分自身の問題として考えてほしい。今後は、ブラックバスの駆除はもちろん、コクチバスを入れない、ブルーギルを拡大させないよう、一人一人が呼び掛け人になって行動を起こして欲しいと訴えた。
「杉」 駆除しかない  秋田さきがけ夕刊 2002.3.20

 ブラックバスと聞けば、政治学者丸山真男の小論「現実主義の陥穿(かんせい)」の一節を思い出す。
「現実とは本来一面において与えられたものであると同時に、他面で日々造られて行くものなのですが(中略)現実とはこの国では端的に既成事実と等置されます」

 バス釣りファンからは時に、「現にいる魚を釣って、なぜ悪い」という意見が出るが、これは既成事実を盾にした開き直りだろう。バスがこの国の湖沼や河川にいる「現実の不自然さ」への想像力が欠けている。

 民間の秋田淡水魚研究会が主催した「ざっこシンポジウム」が十七日、秋田市で開かれた。県内に生息する在来魚をいかにして次代に引き継ぐかがテーマで、議論はバスをはじめとする外来魚問題に集中した。

 肉食魚は体重を一キロ増やすのに、その十倍の動物性タンパク質を食べなければいけないという。推定八十トンのバスがいる八郎湖なら、それまでに八百トンのえさを食べた計算だ。シラウオやワカサギなど年間漁獲量が四百トン程度の八郎湖にとって、これは何を意味するのか考えさせられた。

 シンポの最後、主催メンバーの一人は「一九八二年に秋田市の空素泊(からすぬま)で県内初のバスを確認した時、私に物事を広く見ることができ行動していれば、このシンポは開く必要がなかった」と述べた。

 現在、県内約三干の農業用ため池のうち、一割以上でバスが確認されている。人間が運ばなければ増えるはずのない魚が、これほど生息域を広げると、だれが予想できたか。

 五二年発表の丸山論文は、指導者層の現実主義が戦争の泥沼化を招き、今また再軍備化に誘導していると憂えている。ため池の在来魚たちにとって、バスの侵入は圧倒的な強者との戦争の始まりを意味する。

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