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秋田県雄勝郡羽後町五輪坂アルカディア公園、足田堤
 10月26日(土)〜27日(日)の二日間、羽後町土地改良区(理事長齊藤保雄、組合員数1,564名)が管理する足田(たらだ)堤で大規模なブラックバス駆除が行われた。足田堤は、町の五輪坂アルカディア公園内にあり、上堤、中堤、下堤の三つのため池群からなっている。満水面積約20ha、貯水量15万トン、受益面積170haと比較的大きな農業用ため池だ。

 駆除に参加した団体は、ため池を管理する羽後町土地改良区、公園を管理する羽後町、町の釣り団体5グループ、湯沢雄勝淡水魚の会、秋田淡水魚研究会、秋田県土地改良事業団体連合会、秋田県、雄勝総合農林事務所、秋田県水産振興センター、地元農業者など、地域の総意を結集して行われた。
 ため池の駆除作業を撮影するAKT・秋田テレビ。10月28日(月)、夕方のニュースで「一石二鳥?ブラックバスの駆除で失業対策」が放映された。

 羽後町は雇用情勢が県内でも厳しい地域だが、ブラックバスの駆除と失業対策の一石二鳥を狙った東北初の取り組み。雇用人数は26人で、捕獲前後の作業を含めて最大12日間、緊急雇用創出特別基金約250万円が充てられた。
 五輪坂アルカディア公園内の足田堤。写真は上堤で、今回は中堤と下堤の水を抜き、国外移入種のブラックバスとカムルチーの二種を駆除、選別されたコイ、マブナ、ヘラブナ、タナゴなど、地元の人たちが慣れ親しんできた淡水魚は、全て上堤に移送する計画だ。水を満々に湛えた上堤は、来年駆除する計画で、羽後町土地改良区では徹底した駆除を計画している。
 「なぜこれほど徹底したブラックバスの駆除作戦を展開するようになったのだろうか?」齊藤理事長に伺った。

 昨年までは、どちらかと言えばブラックバスの駆除に消極的だった。組合員は総じて消極的だったが、秋田淡水魚研究会の熱心な説得に理事長が「バス駆除に協力しよう」と決断したことから始まった。水面下ではバスの姿が見えなかっただけに、バスの怖さを肌で感じていなかった。ところが、岩城堤の水を抜き、池底に姿を現したバス、バス、バス・・・に全員が驚いた。

 58センチの巨大なブラックバス、捕獲したバスの数は何と2000匹にも及んだ。ブラックバスの爆発的な繁殖と慣れ親しんだ小魚たちが大量に食べ尽くされ、ついにはバスの胃袋から共食いを示すバスが出てくるほど危機的な状況に、大きな衝撃を受けた。先祖伝来のため池に対する愛着が深ければ深いほど、この異常な現実に怒りも大きかったからだという。
 大型のオオクチバス、通称「ブラックバス」と呼ばれている。ブラックバスは、北米原産の淡水魚で、全長50センチ(最大70センチ)にも達する。淀んだ水を好み、県内では主に湖沼や農業用ため池、川の流れの緩いワンドに生息。魚はもちろん、エビ、カニ、カエル、イモリ、ネズミ、鳥など、動くものなら何でも食べる肉食魚だ。オオクチバスという名前のとおり、大きな口で、自分の体の二分の一サイズの魚まで旺盛に捕食すると言われている。産卵の数は数千〜1万粒以上と多く、外敵からオスが卵を守るなど、極めて繁殖力も強い。

 日本生態系学会は、日本固有の生態系に特に深刻な影響を与えている外来種「悪者」100選に、オオクチバス・コクチバス(ブラックバス)、ブルーギルなどを選定、「外来種ハンドブック」(地人書館)に掲載している。生物多様性締約国会議で採択された移入生物の指針では、侵入を防止すること、もし入った場合は拡散する前に移入種を撲滅することを第一にあげている。それが不可能な場合は、(1)一定の場所に隔離する(2)駆除して個体数を減らすことなどを提案している。
 当日の朝は天気も上々だったが、ため池の水を完全に抜くことができず、湖面に残った水と深いヘドロに足をとられながらの作業は困難を極めた。予想されたこととは言え、生身の生き物を捕獲する作業は、やったものでなければ分からないほど難しく多大な時間と労力を要した。
 ため池の水を排水する下流には、一匹も逃がさないようヤナが二箇所にわたって設置された。この効果は大きく、次々とブラックバスが捕獲された。なぜなら、ブラックバスは流れがあると真っ先に下る習性があるからだ。今後、ため池の水を抜く場合、下流にこうした捕獲用のヤナを設置することを忘れないでほしいと強く思った。
 ヤナに次々に引っ掛かったブラックバス。それでも小さい一年魚のバスは竹の隙間から下流に逃げられるため、下に細かい網を仕掛けておく。さらに下流に同一のヤナを仕掛けるなど、徹底した作戦が重要だ。
 捕獲作業は、中堤・下堤上流部と下流部の二班に分かれて行われた。写真は、下堤上流部の溜まりで行われた捕獲作業の様子。大きなタモ網などで捕獲した魚は、その場でブラックバスを選別、リレー方式で運搬移送された。
 中堤下流。深いヘドロに足をとられながら、捕獲した魚をバケツに入れて運ぶ地元住民。こうした作業が延々と続いた。
 45センチほどのブラックバス。バスを運んできた農民は、シワに刻まれた額に泥が点々と飛び跳ね、汗が滴り落ちていた。「そのバスの写真を撮りたいんですが、手に持ってもらえませんか」。この魚を手にした瞬間、ニコリと笑った。いい顔してると瞬間思った。
 捕獲された大きなコイとブラックバス。大きなタライがすぐに一杯になった。
 下堤下流班は、溜りが大きいだけに最も多くの人数を投入して行われた。カヌーで移動、捕獲はハスが生える際を中心に展開された。
 撮影しようと岸から泥の中へ入っていったが、すぐに膝上まで泥に埋まり身動きできなくなった。途中で諦め、ほとんどズームで撮影した。それだけに泥の中に入って実際に捕獲する人たちの苦労が身にしみた。
 捕獲する人も、カヌーも、捕獲した魚も皆泥だらけなのがお分かりだろう。これはハス周辺の泥の中に刺さっていた魚たちだ。泥まみれの魚は、ヘラブナ、コイ、ブラックバス、カムルチー・・・。
 捕獲した魚を網や大きなバケツに入れて運ぶ。選別されたブラックバスとカムルチーは、県水産振興センターのチームが調査記録している場所へ運んだ。
 次々にバケツに選別されたブラックバスが運ばれてきた。数が1000匹以上になると、測定する方も悲鳴を上げたくなるほどの数だ。
 捕獲されたブラックバスとカムルチー。カムルチーは、俗称「雷魚」と呼ばれる魚だ。平野部の池沼など水の淀んだ水域を好み、小魚やエビ、カエルまでも貪欲に食べる動物食性。最大1mにも成長するため、ルアーなどで狙う釣り人も多い。
 気色悪い大きな斑紋を持つ大型のカムルチー。マムシの斑紋に似ているだけに、激しく動くと「気色悪い」と悲鳴を挙げる人もいた。地元の人たちによると、かつてより数はかなり減ったという。二日間かけて捕獲された数はわずか30匹程度だった。爆発的に増えたバスに比べると、消え行く外来魚という印象を受けた。
 県水産振興センターの職員が、一匹、一匹、体長、重量を測定し、腹を裂いてオスとメスの区別、精巣と卵巣の重さ、胃内容物を克明に記録する。こうした地道な記録の積み重ねがブラックバスの生態を明らかにする上で欠かせない。
 杉山内水面利用部長が、地元の人たちに説明しようと、年齢別に並べたブラックバス。左から今年の春に生まれた一年魚(全長15cm前後)、二年魚(全長25cm前後)、三年魚(全長30cm前後)、四年魚(35cm前後)、五年魚以上(45cm前後)。こういうふうに並べると成長の早さが良く分かる。
 解体調査されたブラックバスの山。ブラックバス1匹が、これだけの大きさに成長するまでどれだけの小魚たちを食べたのだろうか。杉山内水面利用部長によると「肉食魚が食べる餌の量は、体重の10倍」だという。例えば、ハマチの養殖の場合、10キロまで育てるにはイワシ・サンマの餌を100キロ与える必要がある。1キロのバスは、10キロの小魚を食べた計算になる。解体されたバスも可哀想だが、この凄まじいバスの山の10倍もの小魚たちが逃げる術もなく、一方的に食べられたことを連想すると、何とも悲惨な現実に暗澹たる思いにかられてしまう。
 バスの胃内容物。ザリガニ、エビ類、ゲンゴロウブナ、ヤゴ、ブラックバス・・右の写真は共食いを示すブラックバスの一年魚だ。足田堤も岩城堤と同様、末期的症状を呈していることが分かる。地元の人たちの話によると、9年前に水抜きを行った時は、ブラックバスが確認されていなかったという。とすれば、足田堤にブラックバスが密放流されたのは5〜8年程度前のことになる。これほど大きなため池でも、わずか10年も経たないうちに壊滅的な打撃を受けることが分かる。
 大きく膨れ上がったブラックバスのメスの胃袋からは、何と食べたばかりのブラックバスが出てきた。これには全員度肝を抜いた。バスそのものに罪はないとは言え、生きるために寒さに耐え必死に適応しようとしてきたはずだが、わずか10年も経たないうちに、餌不足に陥り、ついには共食いなどという狂った現実を迎えるに至った。北米で静かに生きていれば、立派なゲームフィッシングの対象魚として賞賛されていただけに、何とも哀れな魚としか言いようがない。
 AKTのインタビューに答える齊藤保雄羽後町土地改良区理事長。

 「長引く不況で地元には失業者も多く、一時的な雇用とは言え、ため池の草刈りやブラックバスの駆除で緊急雇用された方々から助かったとの声をたくさんいただいています。ため池を管理する者として、ブラックバスの駆除にこうした人たちが頑張ってくれることは大変心強い」と語った。
 羽後町土地改良区の招きで急遽応援に駆けつけた秋月岩魚さん(写真左)。岩魚さんは隣の山形県生まれで、フィッシングやアウトドア関連などで世界各地を取材するプロカメラマン。1999年9月、「ブラックバスがメダカを食う」(宝島新書)を出版、全国にブラックバス問題を巻き起こした。まもなく第二弾の本が宝島社から出版するという。(写真は、地元のマスコミから取材を受けている場面)

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