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横手市中央土地改良区が管理する蛭藻沼

 12月11日、横手市・蛭藻沼で2001年最後のブラックバス駆除が行われた。凍てつく沼、降り注ぐ雪、腰まで泥に埋もれながら悪戦苦闘が続いた。それでも先人たちが守り続けてきた豊かな沼を取り戻そうと、地域住民と行政が一体となった駆除作戦を展開、最大45センチ、平均サイズ40センチのブラックバス87匹を捕獲駆除した。

 参加した団体は、沼を管理する横手市中央土地改良区(組合員数1865人)、旭東漁協、横手自然研究会、横手市、平鹿総合農林事務所土地改良課、水産漁港課、水産振興センター、農地計画課。
 かまくらの里・横手市は、言わずと知れた豪雪地帯。当日は、沼一面が雪に覆われ、水面も薄い氷を張る最悪の状態だった。

 蛭藻沼は、貯水量23万5千トン、満水面積10ha、受益面積272haの農業用ため池である。沼周辺は、水田、りんご園に囲まれ、大小の池沼が点在。かつては、後三年の役の舞台ともなった歴史的な沼であり、周囲の金沢公園、平安の風わたる公園西沼とともに「歴史と伝説の浪漫回廊」を形成している。「史跡ルート回遊コース」の拠点でもある蛭藻沼は、現在、県営地域用水環境整備事業で、老朽化した取水工の改修、管理道路、親水護岸、八橋、休憩施設などの整備を進めている。
 左の写真は、かつて大正年代に沼を築造した歴史を物語る「中土手」と呼ばれるもの。古老は、古ぼけた中土手に佇み語った。「これは、木杭と土で中土手を築いた跡だよ。今風に言えば仮締め切りみてぇなもんだな。そうして現在の堤を人力で築いたんだ。昔の人は偉いもんだ。」
 沼の水をほとんど排水したとは言え、長年堆積した泥は深く、すぐに腰上までくるほどだった。ブラックバスは、この深い泥の中に潜り込み、捕獲は困難を極めた。スノーボードを利用すれば、かろうじて移動ができる程度。二本の足だけでは、底深い泥にはまって身動きできなくなるトラブルが相次いだ。
 まず最初の捕獲作戦は、沼の中央部。私も近くに行って撮影しようとしたが、すぐに腰まで抜かり身動きできなくなった。泥だらけになって、中土手に逃げるのがやっとだった。それでも地元の人や土地改良課の若い職員らは、果敢に泥の中から40センチ前後のブラックバスを捕獲した。
 ブラックバスやコイ、ナマズを入れた大きな網袋を沼から運ぶ。重い袋は泥に食い込み、おまけに自分の足も泥に食い込む。全身のエネルギーが泥に吸い取られるような作業の連続だった。何度も何度も休みながら、中土手まで運ぶ。古いため池ほど、水辺の生態系は豊かだが、反面泥の堆積も多く、ブラックバスの駆除は困難を極めた。
 捕獲したブラックバスをもつ地元の農民。「蛭藻沼は、一粒の米を作るために、先人たちが守り続けてきた大切な沼だ。そんな百姓の心も知らず、外国生まれのブラックバスをゲリラ放流したやつは誰なんだ。」・・・
 捕獲した魚は、リレー方式で沼の中央から、取水口付近に運ばれ、ブラックバスを選別。選別されたバスは、水産漁港課と水産振興センターの職員によって解体調査へ。
 捕獲されたコイとナマズ。特にナマズの大きさ、量には驚いた。ナマズは、夜や水が濁った時に動き回り、小魚やカエルを食べる。近年なかなか見かけることがなくなったナマズがたくさん生息しているということは、この沼と周辺の田んぼの豊かさを象徴している。さらに周辺の沼には、絶滅危惧種ゼニタナゴも生息しているという。それだけにブラックバスの侵入は地域の人たちにとって大きな衝撃だった。
 コイとナマズは、隔離された水溜りに一旦放流された。
 捕獲されたブラックバス。杉山部長によると、体長は比較的でかく、5年魚とのこと。水温測定では零度、この寒さではバスは何も食べていないだろう、と誰もが思ったが・・・。
 凍てつく吹雪の中、一匹一匹、捕獲されたブラックバスの全長、体長、重量、胃の内容物などの調査が行われた。そして驚くべき事実が判明した。
 ブラックバスの胃の内容物・・・左は、モツゴ2匹、アカヒレタビラ(タナゴの仲間)1匹計3匹の小魚。右はモツゴを何と4匹も食べていた。これ以外に、フナ類や確認不明な魚肉片も胃の中から出てきた。水槽の中で観察されたブラックバスの生態調査によると、「水温5度以下では全然動かず、目の前に小魚が動いても反応しません」と記されている。しかし、蛭藻沼の水温は5度をはるかに下回る零度。それでも、バスは大量の小魚を食べていたのだ。これには杉山部長も驚いていた。
 次々に捕獲された大型のブラックバス。
 日本魚類学会・自然保護委員会副会長・瀬能宏氏は、「生物を使った大規模な環境破壊」と題し次のように記している。

 「…今、日本の在来水生生物を脅かす最も危険な存在として注目を集めているのがオオクチバスです。なぜなら、この魚は小魚や水生昆虫などを食べる肉食性の大型魚で、全長50cmに達すること、卵やふ化して間もない子を親が保護するために繁殖力が非常に強いことなどにより、在来の水生生物に対する影響がきわめて大きいからに他ありません。近畿大学の細谷和海教授の研究グループは、最大クラスのオオクチバス(体重6.2kg)が年間に捕食する餌は、メダカに換算すると、なんと67600尾、約21kgにも達すると試算しています。

 …なぜオオクチバスの分布域は増え続けるのでしょうか?水中に住む魚が陸づたいに移動することは通常ではあり得ません。つまり、これまでの分布地の拡大はすべて人の手によるもので、その担い手のほとんどはオオクチバスのルアー釣りに関連した人たちであることがわかっています。…そして、違法に放流された場所でも、それを釣る行為自体は違法ではなく、見つからなければ放した者勝ちになってしまうという不条理な構図も見逃せません。業界のリーダーが、『オオクチでもコクチでも現在いる魚は楽しませてもらおうという考え方です』(2000年12月11日付けアエラより)などと公言するのですから始末に負えません。」

 オオクチバスが在来生物の生態系に甚大な影響を与えるだけでなく、全国的に密放流が止まらない現状は、「生物を使った環境破壊」だと警告している。

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